表現技法Ⅱ

 

過去に読んだ童話・むかしばなし・お伽ばなし・児童文学などから、好きな作品、印象に残っている作品、感心した作品を参考に、子ども用の物語を創作してみる。物語のあらすじ、登場人物(人間・動物・植物・道具等の物体)、場・時の設定などを決め、物語を書いてみる。

<絵本の世界 山田さん>(対象年齢3~5歳)

表現技法Ⅱ

表現技法Ⅱ

 

<科目担当者コメント>

  • 楽しくお散歩をしていたかい君は、さまざまな出会を繰り返します。
  • 実習の時に是非とも子どもに読み聞かせをしてほしい作品に仕上がりました。ほのぼのとした絵も、子どもに夢を与えるでしょう。

 

<童話の世界 神原さん>

ぼくの消しゴム (対象年代)小学校中学年

 

教室のゆかに、消しゴムが落ちていた。「だれのだろう」。わからなか

ったから拾った。そして、自分の筆箱にしまった。

「ぼくの消しゴムがなーい」

あゆむくんは四時間目の国語の時間に声を上げた。

「あゆむくんよくさがしたの? 机の中は? 筆箱の中は?」

先生はそう言った。

「さがしたけど、見つからないんだあ。おばあちゃんに買ってもらった

大事な消しゴムなのに……」

あゆむくんは落ちこんでいた。ぼくは自分が持っていることを言えな

かった。「拾ったけど、ぼくが取ったって言われそうだなあ」。そんなこ

とを考えていたら、言えなかったのだ。

「となりの席のまゆちゃんに貸してもらいなさい」

あゆむくんは残念そうに消しゴムを借りた。

「おうちの人にまた新しい消しゴム買ってもらいなさい」

先生はそう言っていた。

言えずに授業は終わり、帰りの会が始まった。

「今月の目標を守れた人は手をあげてください」

今月の目標は「お友だちに思いやりをもって行動しよう」だった。ぼ

くは手をあげられなかった。思いやりがあれば、消しゴムを返すことが

できた。でも、できなかった。心の中がモヤモヤでいっぱいになった。

次の日、あゆむくんは新しい消しゴムを使っていた。

「先生、お母さんに新しい消しゴム買ってもらったよ」

あゆむくんは先生に、輝いた笑顔でじまんしていた。

「あらよかったわね。次はなくしちやだめよ」

「大切に使うよ」

あゆむくんは新しい消しゴムを買ってもらって、とてもうれしそうだ

った。

「なら、この消しゴムはもういらないのかなあ」。ぼくは消しゴムをまた

筆箱にしまった。

休み時間になり、クラスのみんなは外へあそびに行った。ぼくは教室

で絵をかいていた。

「さいきん元気ないけど、なにか困ったことでもあった? 先生になん

でも話してみなさい」

先生はそう話しかけてきた。ぼくは先生に話してみようと思った。

「あのね……」

「どうしたの?」

「ぼくね、あゆむくんの消しゴム拾ったの」

「そうなの? なら、あゆむくんに返してあげなさい」

「でも返せないの」

「どうして?」

「ぼくが取ったって思っちゃうかもしれないから」

なみだが出て来そうなのをぐっとこらえた。

「そんなことないよ。あゆむくん取られたなんて思うような子じゃない

よ。拾ってくれてありがとうってよろこんでくれるよ。ずっと持ってた

ら、あゆむくん本当に取ったって思っちゃうかもしれないよ? 大丈夫、

ちゃんと渡しておいで」

先生は笑って頭をなでてくれた。「次の休み時間に返そう」。そう決め

た。

授業が終わった。いよいよだ。

「あゆむくん」

「どうしたの?」

「これ……」

そう言って消しゴムを渡した。

「あ、ぼくの消しゴム!」

「昨日、拾ったんだ。渡さなきゃってずっと思ってたのに、なかなか渡

すことできなかったんだ。ごめんね」

あゆむくんの顔は明るくなった。

「拾ってくれたんだね! ありがとう。おばあちゃんに買ってもらった

大事な消しゴムだったから見つかってよかった。もうないと思ってたか

ら拾ってくれてうれしいよ。本当にありがとう」

そう言ってあゆむくんは笑った。ぼくの心は虹が出たように明るくな

った。

「先生! あゆむくんにちゃんと返したよ。拾ってくれてありがとうっ

て言ってくれたよ」

「よかったわね。次からは拾ったらすぐ渡してあげなさい」

「はーい」

帰りの会が始まった。

「今月の目標を守れた人は手をあげてください」

ぼくは思いっきり手をあげた。

<科目担当者コメント>

  • 使用した漢字も、小学校中学年に合わせてあります。教室でよく起こりそうな出来事に題材を採り、子どもたちのとるべき行動が明確に示されています。
  • 道徳の授業の導入にも使えそうですね。

2020年11月

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