研究科の授業「保健医療福祉特論」について紹介します


新型コロナウィルス感染症が世界中で猛威を振るう中、感染症に立ち向かう医療従事者 には、賞賛や励ましの声が聞かれています。その一方で、目に見えない感染症ゆえに高まる 社会不安の中、感染者やその家族、医療従事者などへの不当な差別や偏見が社会問題となっています。


人間の歴史は感染症との戦いの歴史ともいえるほど、今までいくつもの感染症が流行し、その流行を乗り越えてきました。そして、残念なことに、感染症にり患した患者さんや家族がいわれのない差別的な扱いを受けることも繰り返されています。その最たるものが、国の誤った感染症に対する政策によって、世間の偏見・差別にさらされ、患者さんや家族に大きな大きな人権侵害を与えてしまった「ハンセン病」です。


そこで、大学院の必修科目である保健医療福祉特論では、ハンセン症資料館の木村哲也先生をゲストスピーカーとしてお迎えし、「戦後のハンセン病行政と保健婦の活動」をテーマに講義とディスカッションを行いました。木村先生は、戦後の高知県で活動していた駐在保 健婦の語りをまとめた「駐在保健婦の時代」の著者です。駐在保健婦とは、へき地を中心に保健婦が地域に駐在し、家庭訪問や健康教育などの住民への保健衛生活動を行った保健婦の活動形態の1つです。今回は、駐在保健婦のハンセン病に関する活動を通して、保健婦が国の強制隔離という政策の中で、ハンセン病患者やその家族の苦悩を知りながらも、強制と支援という相反する保健活動を実践していたことを学び、今後の活動への示唆等を得ることができました。


今回は、大学院の学生だけでなく、保健師として勤務する卒業生、学部生にも聴講を呼びかけたところ、多くの反響を得ることができました。まさに、時宜を得た企画であったようです。参加者からは、
「保健婦の語りは、感染症への対応として、また現場の生の声としてとても貴重です。」
「現場の職員の声を国の政策に届ける、まさにトップダウンからボトムアップが必要で あると感じました。」
「保健婦は強制隔離政策に加担せざるを得なかった一方で、地域で正しい知識の提供や、患者の社会復帰支援など保健婦としての役割も担っていたと思いました。」
「保健師という職業は自分の想像よりも人に与える影響が大きく、保健師の在り方で地域を良いようにも悪いようにもできるのだと思いました。」などの感想が寄せられました。


大学院では、今後もこのような魅力ある学びの機会を提供していく予定です。

2021年10月

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