人の心を動かす物語とは?

7月27日(日)に開催したオープンキャンパスでの文芸表現コースの体験授業をレポートします。

当日は、たいへんな暑さの中、全国から多くの高校生が集まってくれました。

今回の授業のテーマは、「ドラマ」を考える ~人の心を動かす物語とは?~ です。

授業の冒頭では、これまでに見た映画・ドラマで「印象に残っているシーン」を思い浮かべ

その状況設定、キャラクター、見たときの自分の気持ちを書き出してもらいました。

(映画やドラマで思い浮かばない場合は、小説でもOKとしました。)

 

各自が選んだ作品を全体で共有したところ、

おなじみの作品から知る人ぞ知る作品まで、実に幅広い作品が挙がりました。

以下、挙がった作品を紹介しましょう。

 

  ヒット映画からは 「借りぐらしのアリエッティ」「ハリー・ポッター」

                        「ゴジラVSキングキドラ」「アルマゲドン」、

 人気テレビドラマからは「HERO」「花子とアン」「軍師官兵衛」「八重の桜」。

 今年上映の話題作も挙がりました。(今日は映画好きの高校生が多かったようですね)

 桜庭一樹さんの直木賞受賞作で映画化された「私の男」、

 歴史エンターテイメント「超!高速  参勤交代」、

 ベン・スティラー主演・監督の話題作「LIFE!」。

 このほか、根強いファンの多い中島哲也監督の「パコと魔法の絵本」、

 貴志祐介さん原作で蜷川幸雄さんがメガホンをとった「青の炎」、

 北川悦吏子さん脚本の青春ドラマ「オレンジデイズ」、

 このほか、国際アンデルセン賞を受賞された上橋菜穂子さんの人気作「精霊の守り人」、

 野崎まどさんのライトノベル「なにかのご縁」・・・など。

表現学科を志望している高校生だけあって、普段からいろんな作品に触れている様子が見えます。

 

さて。こうして様々な作品が挙がったところで、

「では、なぜそのシーンが印象的なのか?」という問いかけをしながら、

今回のテーマ「ドラマ」の核心について、話を進めていきました。

ここではその中の「カタルシス」についてご紹介します。

 

皆さんは、映画やドラマを見て心が大きく揺さぶられたあと、どんな感じがしますか?

たとえば、悲しくてせつない物語にひとしきり涙を流したあと、なんだか「すっきりした~!」と感じませんか?

あるいは、主人公に次々と障害が立ちはだかる映画をハラハラ、ドキドキしながら見たときクライマックスの高揚感のあと、

なんとも爽快な気分になりませんか?

「カタルシス」とは、そのような感情の浄化作用のことをさします。

心の中に溜まっていた混沌とした感情が、心を大きく揺り動かされたことをきっかけに

解き放たれて、気持ちがすっきりする感覚です。

演劇や文芸の世界でよく使われる用語のひとつです。

 

しかも、これはとても古くから示されている概念で、今から約2300年も昔に古代ギリシャ

の哲学者アリストテレスが「詩学」という著書に、人が悲劇を見る効用として記して

います。時代が変われど、人の心の動きには普遍的なものがあります。時を経ても色褪せない名作は、そんな人の心の普遍性を描き、現代人にもカタルシスを与えてくれます。

ドラマは、「観客」の存在を前提とする表現ですから、観客に楽しんでもらえるような、

人の心を動かす物語の設計や演出が必要です。                          

    

 

 

 

「アリストテレース 詩学  ホラーティウス 詩論」

                                              翻訳:松本 仁助 , 岡 道男 (岩波文庫)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/33/4/3360490.html

 

では、カタルシスが提供できるドラマさえ作れば良いのか? 

・・・もちろん、そんなことはありません。もうひとつ大事な視点があります。

小説やドラマなどの創作は、いわば「小さなフィクションの積み重ねの上に、“大きな真実”を語る」こと。

どんな“大きな真実”に着目するかは、作り手側の価値観や人間性によるものです。

それを探求するためにも、「なぜそのシーンが、自分にとって印象的なのか」を分析することは有意義です。

 

文芸表現コースでは、このように、自分がどういうものを描きたいのか、

つまり伝えたい“大きな真実”は何なのかを考える授業も予定しています。

 

最後に、私がこの授業の最後に紹介した映画も挙げておきます。

いずれも今年に見た映画で、私自身が「カタルシス」と「大きな真実」を感じた映画です。

 ●「かぐや姫の物語」高畑 勲 監督作品 http://kaguyahime-monogatari.jp/ (オフィシャルサイト)

 ●「チョコレートドーナツ」http://bitters.co.jp/choco/ (オフィシャルサイト)

 ●「マンデラ 自由への長い道」http://eiga.com/movie/79726/special/  (映画.COM)

 

                           (文芸表現コース担当:杉原麻美)              

 

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この夏のオープンキャンパスは、いよいよ次回で最終回です。

文芸表現コースの体験授業(11:10~) のテーマは・・・

●8月24日(日) 「喜怒哀楽」を表す~心模様をどう表現する?~

いずれも気軽に参加できるワークショップ形式で行いますので、ふるってご参加ください!

詳細はコチラ! https://www.shukutoku.ac.jp/extra/opencampus/tokyo/info/4tokyo20140824.html

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