5月24日(火)4号館3階フリースペース。3年生前学期の科目「表現文化研究Ⅳ(放送表現)」は毎週火曜日の3・4限この教室で授業が行われている。受講生は32名。先生は現役声優としても30年を超えるキャリヤを持っている菊池正美さん。授業は4月からスタートしたばかり、この日は7回目の授業で、いきなりの公開CDドラマ(ラジオドラマ)の実演だ。
教室がスタジオになった。マイクが4本立っている。向こうとこちら側(客席)。その二つの空間をピンと張り詰めた空気が支配する。これから起こる「生演技」という一発勝負の世界がいよいよ始まる。
作品名「デリシャス戦隊オイシンジャー推参」。おいしい食事など、一家団らんにつながる全てのモノを禁止された世界で、それに立ち向かうヒーローの物語。
30分ほどある大作で、舞台に置かれた4本のマイクに入れ替わり、立ち代わり、入っては退きを繰り返しつつ、演技は続いていく。少しでもリズムが崩れると、作品の緊張感が消えてしまう。それだけに出演者は極限まで集中し、全員がこころを一つに30分演じきらねばならない。
32名の学生が全員3つのグループに分かれ、一人で何役もこなしていく。私は会議の都合もあり、第1グループをしっかり見て、第2グループの半分まで見て会場を後にした。このままここで全てのグループの生実演ラジオドラマを見たいと思った。後ろ髪が引かれた。
見て、聞いて私が思ったこと。
清々しい!緊張感の中で、出演者がマイク前で入れ替わりながら見事な生実演だった。兎に角、彼らは打ち込んだ!思いが声として、動きとして、表情に表れていた。作品の理解力も素晴らしく、どんな短い一言でも、どんな長い難しい言い回しのセリフでも、彼らの「こころの叫び」として見事に表現されていた。
それを証明するかのように、演者の目が輝いていた。
自分を賭けて挑む姿に、輝く何かを私は正直、一人一人の学生から感じた。挑む!何と素晴らしいことか。学生の無限の可能性を見せてもらいこころから感謝したい。
その日夜菊池先生と話をした。菊池先生はこう言いました。
「学生には、人前で演じる緊張感、また演じる喜びを感じてほしかった。複数のマイクをみんなで使うマイクワーク、集中力、譲り合いの気持ちなどこの公開CDドラマ(ラジオドラマ)で体験してほしかった」
「最初はみんなマイクの前で演じるのも初めて、マイク前であたふたしてキャラクターもつかめず苦戦していた。稽古を重ね、自分自身で読みこんでいくこと、
他のグループの同じ役の人のセリフを聴くことで、徐々にキャラクターもつかめてきた。今回の講演では未熟な部分も含めつつ、彼らの持てる力を思い切り出せたと思う。いい経験になったはずです。これからも続けていきます。演技が上達するのはもちろん、マイクワークは余裕をもってやること。会話としてのセリフ廻し(自分の前の人のセリフをしっかり聴く力を付ける)を身に付けて欲しいですね」
菊池先生の言葉「学生が持てる力を思い切り出せたと思う」この言葉に私も同感。
個人的な私の希望だが、11月の淑徳祭でこのラジオドラマ、学生の生演技の再現を見たい、聞きたい。多くの人に共感してもらいたい。
学生の皆さん、お疲れ様。ありがとう。
(表現学科教授 松永二三男)