2年前期の「編集文化研究Ⅳ(出版の技法)」では、書籍・雑誌が如何に企画され、そして流通するのか、電子書籍の登場で出版業界はどう変わろうとしているのか、出版の基礎知識を学びました。
15回の授業を終えて、学生たちにとって特に印象的だったのが、ベストセラーを編み出した編集者の視点を学び、その後各自が「出版企画書」を作成して発表したことです。
昨年のベストセラー・ベスト10に入った書籍を手掛けた編集者お三方に、担当教員である野村がインタビューをして、その内容を授業の中で余さず伝えました。「書籍の原稿は、その読者がいる“場所”で読む。ビジネス書ならオフィス街で、健康書なら病院で」「この本のタイトル案は1000本出した」といったエピソードから編集の要諦まで伝授していただきました。「編集者とは何か、本当の意味で理解していなかった。一言も聞き洩らさないよう授業を受けていた」という男子学生もいれば、「(書籍を作りこむ思いの深さに)感動して涙が出そうになった」という女子学生も。
辣腕編集者の発想法から多くを学んだ学生たちは、今度はそれぞれが「出版企画書」の作成に取り組み、さらにはプレゼンテーションに挑みました。「想定する著者は、福澤諭吉です」「えっ?!どうするの」と企画案を互いに掘り下げるなか、「そんな本があったら僕も買いたい」といった「いいね!」発言も飛び出しました。
もうひとつ、学生たちにとって印象深かったのが、カメラマンの善本喜一郎先生をお迎えしての特別講義です。雑誌『BRUTUS』での撮影や広告写真などで活躍されてきた善本先生がカメラマンになる決意をしたのは、世界に知られる写真家、荒木経惟さんとの出会いだったとか。その後、自ら出版社に電話をかけてチャンスをつかんだ体験談を語って下さいました。「写真は、撮る前が大切。(撮られる)相手との関係性をいかに築くか、相手が心地よくなるような状態をつくることが大事です」という言葉に、学生から「ほうっ」と声がもれました。話はさらに人生論にまで及び、善本先生の温かな人柄に魅せられた学生が、授業終了後に助言を求めて列をなしました。
このほか、出版の技法の授業では、グループワークも度々行いました。「アマゾンが出版流通に与えた影響は?その功罪は?」「少年Aの書籍出版をどう思う?」といったテーマは特に議論が盛り上がりました。自分にはなかった視点を学び、さらに同年代の仲間から、いい刺激を受けたようです。
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アマゾンが書籍流通に与える影響、その功罪についてグループ討議 |
カメラマンの善本喜一郎先生におこし頂いての特別講義に学生はおおいに刺激を受けた |
学生が完成させた出版企画書。書籍の内容、タイトル、著者をそれぞれ考えた | 出版企画案を、全員が発表。質疑応答も盛り上がった |
(編集表現コース担当教授 野村浩子)