ベトナムで考える

所用で昨年の12月18日から21日まで、ベトナムのホーチーミン市に行く機会を得ました。

ベトナムというと皆さんは何をイメージするでしょうか。私の世代の人たちはベトナム戦争を、私の場合は自分の専門もあり、米軍の枯葉作戦に用いられた枯葉剤に含まれた不純物のダイオキシン類が原因とされる奇形児の問題です。

  環境面で先ず気が付いたのが、ごみの問題です。私が見た限り、また現地で生活している日本人からの情報では、ホーチーミン市ではごみは分別廃棄されていません。しかし、ごみ箱からペットボトルなどの有価物を個人的に回収する人たちがいて結果的には分別されているとの、皮肉な見方をする人もいました。日本人の間ではほとんど常識ともいえるごみの分別、さらには3R(リデュース、リユース、リサイクル)の考え方の徹底はまだまだです。

もう一つの環境問題はバイクによる大気汚染です。ヘルメットの着用は法律で義務づけられていますが、ほとんどすべての人はマスクをしています。将来ベトナムの経済がさらに発展した時、バイクから車に移行すると思いますが、車による交通渋滞と大気汚染が今から心配です。

 私は環境問題を学ぶならドイツやデンマークなどの環境先進国に行くよりも途上国に行くべきと考えています。

淑徳の学生諸君も在学中に途上国に行き、いかに我々が豊かな、もったいない生活をしているか、感じてほしいと思います。

私たち先進国の人間から見ればベトナムをはじめ多くの東南アジアの国はまだまだ貧しいと言えます。しかし今回のベトナム行で感じたのは、彼らは貧しいがその貧しさを不幸というとらえ方はしていなく、逆にわれわれ日本人より心が豊かに見えました。

写真にもありますようにお昼に市民の皆さんが道端で皆で食事をしています。多分、食事中に会話ははずみ、また料理を用意する人と客は知り合いで、味についても注文を出しているのでしょう。

 

翻って日本では「おふくろの味」が「袋の味」になってしまい、また個食、孤食が問題となっています。

このような姿を見るにつけ、昭和初期の古き良き日本の伝統が彼らの中に生きているように見えます。

「物の豊かさ」から「物+心の豊かさ」にシフトすることが先進国では問われています。先に述べたように、環境面ばかりでなく古き良き日本の伝統を思い出す意味でもベトナムに行くことをお勧めします。日本がここまで来られたのは他国の援助の「お蔭さま」であり、これからの日本は「お互い様」の心が問われていますので。

今回の経験を人文学部での授業に生かしたいと思っています。

 

 

(掲載した2枚の写真は明治大学副学長の藤江昌嗣先生のご厚意で使用させていただきました。厚くお礼を申し上げます)

 

表現学科教授 北野 大

2021年10月

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