歴史学科 板橋区立郷土資料館訪問

受験生の皆さん、大学で学んだ経験をダイレクトに活かすことができる職業としては、どのようなものがあるか、ご存知ですか?一つは、中学や高校の社会や地理・歴史の先生、もう一つは、学芸員です。

 

学芸員は、博物館や美術館に勤務し、そこに所蔵されている資料、昔の人が書き残した古文書や歴史的にゆかりのある美術品、発掘調査で出土した土器や石器などの考古遺物などを調査研究して、展示するといった仕事を担当しています。

 

学芸員になるためには、まず学芸員資格を取得しなくてはなりません。国家試験で取得する方法もありますが、これはとても難しい。大学で取得することが現状では最もやりやすい方法でしょう。

 

もちろん資格を取得できたからと言って、卒業後ただちに、希望する博物館や美術館の学芸員になれるわけではありません。学芸員の採用試験は、教員採用候補者選考試験以上に難関です。

 

ですが…あきらめるのはまだ早い!ともかくも資格を取得して、自分自身の専門分野を究めながら(たとえば戦国大名の領国支配で博士論文を書くとか…)、チャンスを待つこと。また、将来的に博物館学芸員になれる可能性のある職場(たとえば教職・教育委員会など)に入ること、これが大事なのです。そのための第一歩として、大学における学芸員課程の講義があるのです。

 

私は、本学に赴任するまでは島根県立古代出雲歴史博物館の学芸員をしていました。その体験を活かしながら、単なる机上の理論に終わらない実践的な博物館学を研究していきたいと考えています。

 

その一環として、博物館概論を受講している学生諸君を引率して、一緒に板橋区立郷土資料館を訪問しました。

 

板橋区立郷土資料館は、板橋区内で出土した土器・古文書・民具を収蔵し展示する施設です。そこに行けば板橋の歴史を深く学ぶことができることはもちろんですが、同館の敷地内にある古民家で板橋区内に伝わった年中行事を体験することもできます。

 

今回の訪問で学生諸君は何を学んだか。調査の目的は、狭い施設と限られた予算などいろいろな制約の下で、地域博物館がどのような工夫をしているのか、といった点を実地に確かめることでした。

 

学生諸君は、4つのグループに分かれ、学芸員の皆さんに館内を案内していただきながら、施設の概要や業務内容について熱心に質問を繰り返していました。

 

大学に戻ってきてからは、グループごとに調査の成果を持ち寄り、地域社会において博物館が果たしている役割についてディスカッションを行います。

 

一般的に、博物館学の講義では、博物館や美術館のあるべき姿、理想像が語られ、日本における現実の博物館や美術館の問題点のみが指摘され、そこで話が終わってしまう場合が多かったと思います。

 

しかし、かつて現場にいたことのある私としては、問題の本質を見抜くことができるバランス感覚を持った学芸員を育てたいと考えています。

 

まだ、スタートしたばかりの歴史学科と学芸員課程ですが、これからも板橋区立郷土資料館のような地域に根ざした地道な取り組みをなさっている博物館や美術館を訪問したいと思います。

 

現場の学芸員の皆さん、淑徳大学歴史学科をどうかよろしくお願いいたします。



2021年10月

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