野村ゼミ『日本人あるある』英語解説の冊子を完成

 2017年、野村ゼミ3年生は半年間かけて『日本人あるある』の冊子づくりに取り組みました。企画、取材・執筆から編集・デザインまで、すべて学生が手掛けて完成させました。さらには秋葉原で外国人向け配布イベントを行いました。

 この取り組みは「東京2020応援プログラム」に認定され、新聞各紙で紹介されることになりました(詳細はこちら)。その取り組みを報告したいと思います。

  2017年4月。今年の冊子制作テーマは「TOKYO」、ここから発想できるテーマなら何でもよい――。
教員からこの課題を示されたとき、ゼミ生は一瞬戸惑った表情を浮かべました。
 ここから議論を開始。TOKYOから連想するのは、国際都市東京。2020年の東京五輪に向けて増加が見込まれる訪日外国人に向けて何かを伝える冊子を作ろう、と議論を進めるなかテーマの方向性は固まります。「Kawaii文化」「東京の横丁」「1964年と2020年の東京の比較」「日本人の不作法」・・・などアイデアがどんどん飛び出しました。

 最後に絞りこまれたのが「日本人の不作法」。外国人からすると、日本人はどうしてこんな行動をとるのだろう?と不思議に思うことも多いでしょう。そうした疑問に答え「日本人って面白いな、日本っていいな、また来たいな」と思ってもらえるような冊子を作ろう、しかも日英対訳で、と企画は固まりました。

 タイトルは「Japanese aruaru(日本人あるある)」とすることになりました。


6つのパートで、取材先を探し、取材・執筆、編集を行う

 さまざまな「あるある」をホワイトボードに書き出し、グループ分けしていきます。そうしてまとめたものが、以下の6ジャンルです。担当を決めて資料集め。それぞれの分野で解説をしていただく専門家の方も学生が探して、取材をしました。実際に冊子にするうえでも、各ジャンルで工夫をしました。

アサツーデイ・ケイの藤本耕平さんに若者編、オタク編でお話を伺いました

千葉商科大学の専任講師、常見陽平さんに残業問題について解説していただきました

◆電車編
 電車の中で居眠りをする、化粧をする…など、大人から学生まで、幅広い層の人が共感できるような「あるある」を厳選して作りました。なぜそのような行動をするのか、社会心理学者にコメントもいただき、読み応えのあるものになっていると思います(担当;古川、今別)。

◆若者編
 若者たち(16歳~21歳)に、よくしてしまいがちな行動は何か?というアンケートを取りました。より親しみやすくしたいという思いから、ランキング形式にしてみました。若者のコメントを吹き出しにし、LINEなどの画像配置にもこだわりました。取材当日は緊張をほぐすため、開始1時間前にオフィス内のカフェに集合し、打ち合わせをしました(担当;宮崎、玉井)

◆オタク編
 私自身がアイドルオタクであり、日本のオタク文化について知りたい!と思っていたので、自分の行動を振り返りながら楽しく情報収集をすることができました。広告会社の若者研究の専門家に「現代のオタク文化」について取材をさせていただき、オタク心理を掘り下げました(担当;馬場)。

◆性格編
 国立国会図書館で「ありがとうとすみませんの違い」にまつわる論文をみつけました。日本人はすぐにへりくだると書かれていたので、「謙虚」に着目し、「すぐにすみませんを言う」というあるあるを挙げました。専門家の方のまとめコメントも長めに入れました(担当;八藤)

◆食べ物編
 お通しの意味、箸の使い方から日本食の特徴まで、フードアナリストの方にたくさん伺ったお話を短くギュッとまとめるのに苦労しました。Q&A形式にしたので、文字が多くても見やすくなったのではないかと思います(担当;船生)

◆仕事編
 日本人の働き過ぎという点に着目し、残業問題をテーマにしました。いろいろ調べた結果、残業問題に関する著書のある専門家にインタビューをしました。なぜ残業をしてしまうのか、どうすればなくなるか短くまとめ、文章の書き方を他に人に合わせるのに苦労しました(担当;佐々木)


デザインと翻訳に苦労する

 次に待ち構えていたのは、デザインの壁です。使うのは、プロのデザイナーも使うデザインソフト「インデザイン」。編集長を務める玉井沙理菜が中心にレイアウトを進めました。「デザインはポップにしたり、自分たちがモデルとなって撮影したシーンの写真を使ったりすることで、学生らしい感じを出しました」

 イラストは、馬場沙理奈が担当。「すべてのイラスト加工をスマートフォンのアプリを駆使して描いていきました」と、加工も若者ならではです。デザイン作業と同時に、取材・執筆を終えた原稿を、外国人読者に読んでもらえるよう英訳していきます。

 各担当者が下訳をし、その翻訳を海外に住む日本人にチェックしてもらいました。翻訳をとりまとめたのは、八藤愛美です。「かなり、ぎりぎりの状態で膨大な量をみてもらいました。日本の学校では学んでこなかった表現が戻ってきて驚いたこともあります。たとえば、何かに夢中になっていることを表すのに、“MAD”という単語を使うなどです」

 デザインや翻訳に予想以上に時間がかかり、前期で完成するはずだった冊子が刷り上がったのが、秋深まる十月末。
大学に運びこまれた2000部の冊子を、いかに外国人に手にとってもらうか、外国人とのコミュニケーションに活用してもらうか、配布先を検討して発送作業を行いました。

 同時に文化祭の発表に向けて、冊子制作をテーマに研究発表の掲示物を作りました。2日間の文化祭では、100部強の冊子を配布し、たくさんの感想コメントもいただきました。

  

 さらに、もうひとつ、大きなイベントが控えていました。冊子配布イベントです。学生発案で「せっかくだから、外国人の多い街中で配布イベントを行おう。秋葉原がいいだろう」ということで、12月7日に実施の運びとなりました。
この取組が「東京2020応援プログラム」に認定されたことを受けて、プログラムのマーク入り看板も作成。これを胸元にかけての配布となりました。

 学生たちは、冊子を介しての異文化コミュニケーションを楽しんだようです。「正直かなり不安で、もしかしたら一冊も受け取ってもらえないかと思っていたのですが、結果は大盛況!受け取った人も面白いと言ってくれて、とても嬉しかったです」(東海)

 「オランダから来たトーマス(40代)さん、フランス人のヴィヴィさん(34歳)など、直接冊子を渡して説明をすることができました。その場でじっくり読んでくれた方もいて感動しました」(玉井)。



 同イベントには、新聞各紙の記者が取材に訪れ、冊子の制作意図などについての質問を受けました。「取材を受ける」ことも、貴重な経験となりました。新聞に掲載されたのちは反響の大きさに驚き、「日本人あるある」英文解説に対するニーズを改めて知ることとなりました。

 冊子の制作を通して、ひとつのことをやり遂げる大切さ、それぞれの得手不得手を踏まえてチームで何かを作り上げていく意義――その大変さと醍醐味を、それぞれが感じ取ることとなりました。何より、完成した冊子を手にしたときの達成感は、これまでにないものだったようです。

(指導教員;表現学科教授 野村浩子)

2021年10月

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