「子ども虐待の理解と対応」について学ぶ―ある高校3年生Aさんの場合(その1)

「子ども虐待の理解と対応」について学ぶ―ある高校3年生Aさんの場合(その1:入学まで)

淑徳大学総合福祉学部社会福祉学科教授  柏女 霊峰

 はじめに

大学で学ぶ目的は、自らがめざす生き方・職業を実現するための基礎的資質を高めることと、これからの人生で出会う様々な困難を切り開いていくための生きる力を養っていくことの2つがあります。

 社会福祉学科においては、前者については、社会福祉士や精神保健婦福祉士の国家試験受験資格や教員免許を取得することなどが挙げられます。

後者については、3年次生から始まる社会福祉専門研究Ⅰ-(ゼミナール)や総合課題研究等があります。後者においては、自ら問いを立て、その問いに対する先行研究を調べ、仮説を立て、その仮説を検証するための調査やインタビューを行ったうえで、自らの回答を得ていきます。

こうした一連の作業が、卒業後の人生で出会う様々な疑問や岐路の克服に役立つのです。

ここでは、オープン・キャンパスで「子ども虐待の理解と対応」の模擬授業を経験したひとりの高校3年生Aさんの歩みを、大学における4年間の学びを中心に紹介することにします。

Aさんの後に、多くの方々が続いてくださることを願っています。

 1.オープンキャンパスでのテーマとの出会い

令和元年623日、淑徳大学総合福祉学部第1回オープンキャンパスが千葉第一キャンパスで開催され、高校3年生とその保護者を中心に約700名が参加しました。

そこで、私は、社会福祉学科の模擬授業を行いました。

テーマは、最近、衆目を集める子どもの虐待死亡事件が起こっていることを考慮し、「子ども虐待の理解と対応」として45分間の授業を行いました。

Aさんは社会福祉全体に関心があったので、この授業に参加しました。

 2019OC













  

   


 淑徳大学総合福祉学部第1回オープンキャンパス風景


 2019OC模擬授業教室

社会福祉学科模擬授業案内



 2019OC模擬授業の様子





 









      

   模擬授業風景


  


そこでは、昨年3月の東京都内の死亡事例、今年1月の千葉県内の死亡事例、同6月の北海道における死亡事例を紹介しつつ、子ども虐待の定義や発生件数、発生機序や虐待が子どもに与える影響などについて資料を基に学び、子ども虐待に対する制度や援助の現状などについて学びました。

最後に、子ども虐待の通告はすべての国民の義務であること、そのために、「189(いちはやく)が短縮ダイヤルとして設定されていることを知りました。

 Aさんは、こうした困難な状況におかれた子どもたちや家族の相談援助を行いたいと心に決め、淑徳大学総合福祉学部社会福祉学科に入学しました。

入学前編 終了