2016年6月アーカイブ

日本における難民支援活動に関する講義

難民支援協会(JAR)の鶴木さん、日本における難民支援について講義
講義の様子

「世界動向と国際貢献C」(松薗担当)の授業では、毎年何人かの外部講師の方々に、支援の現場のお話を伺う機会を設けています。6月15日には難民支援協会(JAR)の鶴木さんに、日本における難民支援についてJARの活動を紹介しながら講義をしていただきました。  

6月20日は世界難民の日でした。近年増え続けている難民(国内避難民を含む)は世界中で6500万人とUNHCRから報告されました。昨年は7000人を超える難民が日本にもやってきましたが、難民認定を受けた人は十数人、多くの難民は先が見えない不安定な状況におかれています。ほとんどの学生にとって、難民問題はちょっと遠い問題であったのではないでしょうか。  

難民の人々の日本でのエピソードの紹介や病院でのコミュニケーションの助けになる「ゆびさしメディカルカード」、新宿区での「減災まちあるき」など具体的な事例を通じて、難民問題を理解する最初の一歩になりました。

福祉や教育、心理、地域政策、看護、栄養等を学んでいる学生たちにとって、日本にいる難民が、あたりまえの生活を送れるようにするために、何ができるのかを考える機会になったと思います。

コミュニケーションの助けになる「ゆびさしメディカルカード」
「ゆびさしメディカルカード」

新宿区での「減災まちあるき」
新宿区の「減災まちあるき」

難民支援協会(JAR)の活動についてはこちらをご覧ください。

EPAのベトナム人介護士候補者が千葉キャンパスに来校EPAのベトナム人介護士候補者が千葉キャンパスに来校

平成28年6月23日(木)EPAのベトナム人介護士候補者160名ほどが千葉キャンパスに来校され、社会福祉学科の3年生4年生と交流しました。

交流会においては、先ず全体会で、学部長のあいさつの後、淑徳大学の系列法人である特別養護老人ホーム共生苑で勤めるEPA第1期の先輩ベトナム人の2名からの講演、その後各教室に分かれて本学学生との意見交換を行いました。

研修生は外務省の事業である日越経済連携協定に基づく人材交流として、ベトナムで1年間日本語教育と福祉を学び、日本語検定N3を取得した後来日され、3年後の介護福祉士の資格取得を目指しています。

交流した学生の感想では、日本語を1年しか学んでいないとは思えないほどコミュニケーションが取れ、「普通に会話ができていました」と驚いていました。

(文責 藤野)

EPAのベトナム人介護士候補者が千葉キャンパスに来校EPAのベトナム人介護士候補者が千葉キャンパスに来校

「これからのコンビニの役割」について福祉×企業×地域という目線から考えたプレゼンの実施

文責 社会福祉学科 松山 恵美子

私たちの生活にとって、とても身近な存在となったコンビニですが、これから超高齢社会を迎えるにあたり、どのような新たな役割や機能が必要となるのかを福祉的な目線から考えてみました。

510日から610日までの1か月期間で情報収集を行い、624日に企業様、地域町内会副会長様が見守る中、プレゼンを実施しました。

<調査方法>

・自分たちの目で確認した調査結果

・千葉市中央区南町共栄会町内の皆様へのアンケート調査結果

<発表者>

・前期科目「福祉系ビジネスインターンシップⅠ(担当教員:卜、高田、松山)」から3グループ

・「社会福祉専門研究」戸塚ゼミおよび松山ゼミ

今回の試みをご承諾くださった企業様およびアンケートにご協力くださった町内会副会長様が見守るなか、学生は1グループ10分のプレゼンを行いました。

今回の発表に至るまでには、グループのなかで多くの事を検討し、意見を出し合い、ぶつかり合いなどを経験することとなりましたが、すべてのグループが時間厳守のなか、すばらしいプレゼンをすることができました。

終了後、企業様および町内副会長様からのご意見や感想をいただき、学生は改めて多くの気づきと学びを得ることができました。

このような機会は学生にたくさんのことを考える時間を与え、文字としてまとめていくことの難しさと大切さを感じるという、とても貴重な経験となりました。

福祉系ビジネスインターンシッププレゼン1
Aグループ 自分達の目で確認した調査結果について

福祉系ビジネスインターンシッププレゼンの様子2
Cグループ 店舗考える福祉的な提案


Bグループ 地域との関わりから考える福祉的な提案

戸塚ゼミコンビニプレゼンの様子
戸塚ゼミ アンケート自由記述からの提案

松山ゼミコンビニプレゼンの様子
松山ゼミ アンケートの自由記述からの提案

これらの活動は、皆さまのご理解と協力がなくてはできないことです。
そのような思いも学生と共有できましたことを感謝致します。

「体験する」ということ

 

‐‐ 先生の特別なこだわり。仕事の中でもいいんですけど、もっとパーソナルな部分のこだわりでもいいんですけど、何かありますか。

 

まあ仕事なんですけども、治療でもそうだしあるいは臨床の教育でもそうなんだけども、「体験する」っていうこと。五感で感じるっていうことは、大事にしてるつもりですね。ゼミのモットーっていうのがあって、「動いて、感じて、考えよう」。知識を得てからやってみようではなく、まあそれが普通だと思うんだけども、そうすると、頭でっかちになっちゃって、見落としてしまう。大事なものが感じられなくなっちゃうってことがある。「感じる」ってことはやっぱりすごく大事で、心理学って感じることを大事にしなければって思っていて、例えば、これね、ACTのワークで使ったりするんですけども、こっちはアドミッションに買ってもらった市販品なんですけども、こっちは院生が縫ってくれたんですね(お手玉)

 

‐‐ 手作りですか?

 

そう

 

‐‐ すごーい

 

触ってみて

 

一同: 失礼します

 

中に入っているものも違うんです。

 

‐‐ わたし幼稚園くらいの時に、おばあちゃんがあずき?紫いろっぽいやつでお手玉作ってくれたんです。これなかになにが入ってるんだろう気になる(笑)

 

一同  笑い

 

ねっ、触ると結構もう「あれっ」っていって引き込まれちゃって、「あれこれどう違うんだろうとか」そういうことが起きてきますよね。当然それは学生でもクライエントさんでも起きてくるわけなんだけれども、そういうのは実際自分で触って感じてみないと「あー、お手玉でしょ」って

 

‐‐ うん

 

考えだけで、思考だけで判断してしまうと、「なんだこれお手玉じゃん」で終わってしまうんだけども、触ってみると「えっこんな音するんだ」って

 

‐‐ うん

 

‐‐ すごいこれ全然違う音する!(笑)

 

それで触ってみることで、「あー!」って気が付くようなことがあるし、それが人によって違ってるし、感じてもらいかた、そして言葉にしてもらいかたの違いっていうのが本当に千差万別になってくるし、さっき言ってたそのセラピストも一人一人個性があるってことなんだけども、こういうのをどう感じて、あるいはどう体験してもらおうとするかってのも、本当千差万別なんですよね。理論としては、これはマインドフルネスのツールで、お手玉のマインドフルネスっていうエクササイズで、それで、見てみましょう、聞いてみましょう、触ってみましょう、っていうようないくつかの基本的なやり方はあるわけなんだけども、それを実際にやってみると、セラピストの役の人でも、微妙に違うことをやるわけだし、当然相手、実際体験するほうの人も違う体験しますよね。そういうことを一つ一つ積み重ねながら、臨床って覚えていくのかなと思っていて、そのためには道具もある程度こだわることが必要になってくるのかな。

 

‐‐ そうですよね。体で感じて、触れてみて、色々な捉え方を模索してみる

 

うん、だから理論で、言葉で書いてしまうと、それこそ教科書に書いてあるような、これを大事にしましょうとかこれをやってからこうしましょうみたいなことになるんだけども、実際は、やっぱり五感で感じて身体があって生きている。クライエントさんもそうだし僕らもそうだし、それでその人同士がやり取りするわけだからかなり違う体験になっていくんですよね。それを学生に教えていくときに、目に見えるあるいは明らかに体験として記憶に残るような体験をすると、学生の方もわかりやすいというか、実感があるので、そういう実感をとにかく体験してもらおうというようにやっています。

 

‐‐ うん

 

例えば3年のゼミも、特に前期は、二週にいっぺんはエクササイズをやって体験してもらう。もちろん体験しただけだと「なんだったんだろうね」ってことになって、大学のゼミにならないので(笑)それはこういうことだよって、研究の方でおさえてくってこともやってもらうんですけども、まず体験してみようと。つまり体験する前にいろいろ本で読んじゃって、言葉で説明しちゃってから体験すると、自分の枠組みの中でしか体験できなくなっちゃうので

 

‐‐ うん

 

まず自分の感性を信じて、体験してみて、その中でいろいろなうまくいかないこともあるし、疑問もでてくるし、不安に感じることもあるかもしれない。それってなんだろうかって、文献をじっくり読むと、ちょっと違う読み方ができるのかなって。

 

‐‐ なるほど

 

だから頭だけで読まない。身体と頭がちゃんとつながってるような、勉強の仕方、研究の仕方もそうだし、臨床の仕方もそうだし、あともっと言えば生き方もそうなのかなって

 

‐‐ うん

 

まあ実際には学部のゼミ出ても、8割9割の人は民間企業就職するわけですよね。まあ福祉施設にいく人もいるけども。そうすると心理臨床やってるってわけではないような人がかなり多いわけだけども、でも、なんかゼミで、ああいう仲間たちとこんなことやったよなっていう体験がどっかに残ってて、発展していってくれるといいなって思ってますけどね。

 

‐‐ まず体験する

 

‐‐ うん、先に体験してから勉強ってなると、多分興味とかも、普通に最初から教科書開いてみたいなのより、すごい面白く学べそうだなって思いますね。

 

ただし、ある程度枠がないと「何でこんなことやるんだ!」とか

 

‐‐ あははは

 

あと、出されたものですごく不安になっちゃうとか、そういう危険性もありますよね。だからリスクは当然あるので、ある程度の枠の中でやってくっていうことは、相当気を付けてやってますけどね。思わぬ反応をする人もいるので(笑)

 

‐‐ 思わぬ反応(笑)

 

それこそお手玉なんて出したら、いきなり投げつけちゃうなんてことも。幸いまだないですけど(笑)あり得るわけですよね

 

‐‐ あり得ますね(笑)

 

取り合いになっちゃうとかね。これ、投げてもらうってこともやってもらったりするんですよ。一人でいろいろ触ってみようって時は静かにいろいろ感じてみようってことでやってもらってるんだけども、じゃあまず自分で投げてみましょうってことでだと、小さい頃思い出して喜んでやるわけですよね。じゃあ二人でやり取りしてくださいってなると、急に雰囲気が変わってきて、やっぱり落としちゃ悪い、相手が取れるように投げなきゃって、とっても気を遣う人もいるし、あとは同じテンポでずーっとやり続ける人がいたり、一回一回投げ方を変えて、相手が取れるかどうかを楽しむ人もいて、だから5組くらい一緒に並行してやると、全然違うやり方をするわけですよ。しかも周りが見えなくなって二人の世界に入ってしまったりするわけですよね(笑)それで、はいストップって言って、今どうでした?どんな体験しました?っていうのをそれぞれ語ってもらうと、自分と他のペアが随分違うんだなとか、そんなこと感じる人もいるんだとか、わかりますよね。

 

‐‐ そうですよね、一人だけでは気付かないことも多いですよね

 

そうですね。

ゼミの同級生でもいろんな人と、それから先輩やら後輩やらっていろんな人とやってみてると、そこだけでも幅が出ますよね。そういう幅を持ってクライエントさんと関わると、柔軟な対応ができるっていうかな。「僕はこんな風に生きてるんだー!」って、それはとても良い生き方かもしれないんだけども、それだけでいきなりクライエントさんにお会いすると、合う場合にはすごく良いんだけども、当然合わない場合もあるし、合わないと、自分の能力がないんじゃないかって悩んじゃったりするわけだけども、その前にいろいろ幅を広げて、色々な体験を深めていってもらいたいですね。その時に目に見えて何をやったって、わかりやすいというのがうちのゼミの特徴ですかね。

 

‐‐ 日常、仕事以外で、何かこだわりってありますか?

 

こだわり?

 

‐‐そうですね(笑)普段生活している中で。

 

うーんどうでしょうね(笑)。僕はもともとはこだわる方なんですけども、まあ、自分なりに楽しめればいいやって。例えばお酒でいえばワインが好きなんですけど、でもワインってやっぱりきりがなくて、古いものとか貴重なものとかってすごい高かったりして、あと、高級な和牛とこのワインは合うとかってあるわけだけども、あんまりお金かけてっていう感じは僕はなくて、もっと庶民的な感じで、まあ普通に手の届くところで、今日の気分だったらこっちの方が合うだろうなとか、この料理だからこっちが合うよなとか、そういうのはそれなりに楽しめればいいのかなって(笑)

 

一同: (笑い)

 

身の丈で楽しめればいいのかなって。料理も作るんですけども、昔始めたころは割と、例えばシチューが好きなんですけども、じゃあシチューの肉はどういう肉でとか、煮込み方はどんなふうにしてとか、始めたころはそんな感じでこだわってたんですけど、まあ、素人がそうやってこだわっても大した違いはないなって(笑)

 

一同: あははは

 

少し年を重ねるとわかって来たんで、むしろ出会いを大事にするっていうかね、マーケットで、「今日はこのお肉が僕を呼んでる!」とか

 

‐‐ あははは

 

昔は肉の方が好きだったんですけど、最近歳のせいか魚も好きになってきて、新鮮な魚がそろってるスーパーで、今日はどんなのがいるかなって、「あっこいつは僕に食べられたがってる」とか(笑)

 

一同: あはははは

 

そんな感じで、じゃあこれに合うワインはとか、ソースをどうしようかとか、あと、家の子どもたちは割と好き嫌いが多いので、これは子どもは食べないな、じゃあ子どもにはこれにしとくかとか、そこまで組み合わせないといけないので、いろいろ判断しなければいけないことが多いので、まあそれはそれで大変っていえば大変なんだけど、楽しみではある。

 

‐‐ なんか楽しそう(笑)主婦みたいですね(笑)

 

そうですね(笑)

 

‐‐ 魚が僕を呼んでいるってうちのお母さんもよく言います(笑)

 

‐‐ 食へのこだわりは結構あるって感じます

 

食べるって五感で、見て楽しむ、聞いて楽しむ、触って楽しむ、味、香りを楽しむ。香りは好きですね。コーヒー、紅茶、ワインとかその辺は何でもいいっていうんじゃなくてこの店がいいとか、コーヒー屋さんとかでも行きつけになってその店ばっかりとかってこだわったりしますね。紅茶はダージリンが好きなので、今紅茶屋さんいっぱいできてて、いろんなブレンドのものをたくさん出してるんだけども、ダージリンって場所が限られてるから、あの農園のっていうと、それだけで買い占められて、高いんだけどね。まあそれは、コーヒーが普段は好きなんだけども、今は紅茶がいいなって時には千円以上もする紅茶を飲んだりはしてますね。

 

‐‐ へえー

 

まあそういう、さっき言ってた、一つ一つの体験を大事にするってことと、当然それが活きてるわけですから、食事もやっぱり五感ですよね。そしてそれをどんなふうに楽しむか。あと、運動はあまりしないんだけども、歩いたりすることは心がけていて、やっぱり歩いたりすると、体の方もいろんな感じがしてくるし、また歩けば、あそこの花が咲いたなとか、あそこで子どもがこうだなとか、いろいろ感じられるわけじゃないですか。そういうのを一つ一つ大事にしたいなっていうのはありますね。だから、一つのことにこだわってという感じではないかもしれないですね。

 

‐‐ なんかさっきの研究職の話を聞いてる時も、今のこだわりの話を聞いてる時も、千葉先生は柔軟なことを大事にする方だなって思いました。

 

あ、そうですか、ありがとうございます。

 

‐‐ 僕も思いました

 

実はACTでは柔軟性を大事にしていて、そういう話をしてないのに受け止めてもらえたっていうのはすごく嬉しいですね(笑)

 

‐‐ よかったー(笑)

 

‐‐ 今回はありがとうございました

 

こちらこそありがとうございました

 

セオリー通りではない意外な発見をクライエントさんとのやり取りの中で教えてもらう

 

 

‐‐ まず最初の質問なんですが、心理職ならではの面白い発見や楽しいことなどを教えていただけますか。

 

面白い発見・・やっぱり臨床でクライエントさんが元気になっていったり、生き生きとしていったりする。そしてそれがセオリー通り、技法通りに変化していったというよりも、その人らしい形で、その人のユニークさを持って、「あーこんなことできるんだ」とか「こんな変化があり得るんだ」という風なところで、その人らしく生き生きしてきたときは嬉しいですよね。

 

‐‐ なるほど

 

相手の方が元気になって嬉しいっていうことももちろんそうなんだけれども、「この技法でこんな効果もあるんだ」とか「この技法こんな風に使う人もいるんだ」とかって、一応技法とか理論っていうのが型通りというか、教科書みたいなのがあるわけじゃないですか。そのとおりいく場合ももちろんあるわけなんだけど、そうじゃなくて、意外な発見というのかな、「こんな効果もあるんだ」とか「このやり方でもいいんだ」とか「こっちのほうがいいな」とか、そういうのをむしろクライエントさんとのやり取りの中で教えてもらうっていうかね、見つけてもらうときっていうのはすごく嬉しいし、喜びを感じますよね。

 

‐‐ セオリー通りにビシッと行くってことは少ない方なんですか?

 

どうだろうなー。基本はセオリー通りなんだと思うんですけどもね(笑)

 

‐‐ 千葉先生の研究に関して面白い発見とかはありますか?

 

今言っていた通り臨床が研究でもあるので、新しいやり方を導入して試してみて、効果があったっていうのはもちろんそれはそれで嬉しいわけですよね。でも、そういうときに、必ずしもセオリー通りとか予測通りではなくて、「こんな使い方をする人もいるんだ」とか、「こんな効果もあるんだ」っていうのが見つかったとき、あるいはそれが「じゃあこうやったら説明できるのかな」とか、クライエントさんの変化についてこういう理解をすればいいじゃないかとか、だったらこれもできるんじゃないかっていう風に新しい仮説が出てきたりとかね、そういうモデルが発展したりとか、そういう時って面白いですよね。

 

‐‐ そういう理論体系とかモデルっていうのは常に、というか頻繁に変わっていくものなんですか?

 

そうですよね。基本のところは変わらないんですけども、何年かにいっぺん十年にいっぺんとかは割と新しい理論体系が出てきたりもするし、それがどう適応されていくのかっていうことについては、それこそケースバイケースでクライエントさん一人一人によって違うところがあるので。

 

‐‐ でもあまり、どういう例があったかっていうのはプライバシーの面でダメなんですかね。

 

うーん

 

‐‐ こういう面白いことがあったみたいな。

 

こんな面白いことがあった・・僕は今、臨床の基本はACTっていうやり方をしてるんですけど、こんなのもACTで使ったりするんですけども(お手玉をみせてくれた)

 

‐‐ へえー

 

僕は今心理臨床センターを主に臨床の基盤にしているんですけども、心理臨床センターの方は、院生に担当可能なケースは極力院生にもたせるわけですよ。そうすると自分が何やるかっていうと、EMDR療法っていうのがありまして、トラウマの心理療法なんですけど、それは臨床心理士の資格を持っててさらにEMDR療法のトレーニングを受けなければいけない。そして、基本は臨床心理士の資格を取ってから、その訓練を受けてくださいということなので、院生は訓練すらまだ受けられない状態なんですね。今心理臨床センターで他の先生方もEMDR療法はやってないので、それを希望してくるクライエントさんは僕が担当する。そして普通にACTが適応可能だろうなっていうのは院生に担当させる。そういう感じでやっているんです。EMDR療法のやり方っていうのはかなりガチっと決まっている、構造化されたセラピーなんですけども、セオリー通りだと、中々進展しない、トラウマの点数がある程度以上下がらない、みたいなことがあるんですね。

 

‐‐ なるほど

 

そういうときに、ACTの技法を少し導入して、そうするとトラウマとどう向き合っていくかっていうことなんだけども、EMDR療法の方は脳の処理プロセス、適応的な処理プロセスが脳にそもそも備わっていて、それを刺激してあげるっていう理屈なんですね。ACTのほうは、嫌なこと辛いことがあるとついついそれから逃げてしまう。逃げてしまうことで、問題が先送りになって悪循環になってなかなか解決しない、場合によってはひどくなっちゃう。ということで理屈は全然違うんですけども、でもストレッサーから逃げてしまうということに関しては、ACTの技法を使って逃げないように、自分が向き合ってるのはこういうストレッサーなんだなというのが分かって、それをイメージして、逃げないでとどまっていられる自分というのが感じられるようになると、EMDR療法やってても、記憶の中の怖い刺激っていうものに、逃げないでとどまっていられる。そうすると脳の処理プロセスが進むようになっていって、トラウマ処理が進んでいくという風なことがあって、まあ本来全く別のものなんだけども、組み合わせてやってみたらば、結構これ使えるじゃんっていうのはこの一、二年体験していて、それで、あの人でこんなことができたとかこっちの人はこんな風に変わっていくんだとか。あと部分的には院生にも陪席してもらって、エクササイズの部分だけ院生にやってもらうなんてこともあるんですけども、そしたら院生が結構独自のというか独特の雰囲気でやってくれて、それが良かったりなんてこともあったりして。

 

‐‐ へえー

 

それから僕一人だけでなくて、院生とも知恵を出し合いながら、あるいはそれぞれの持ち味を活かしながら、クライエントさんと一緒にやってるという感じで、そういうのがうまくいったときなんていうのは「やったー!これ結構効くんだ」そういうことはありますよね。

 

‐‐ ほんとにケースバイケースなんですね。

 

まあそうですね(笑)抱えてるトラウマもそれぞれ違うので全く同じようではないですね

 

‐‐ いろんなケースがあるってことですもんね

 

うん

 

‐‐ クライエントさんのもとの性格とかもそうだし、あとそういう、院生の人は院生の人なりの雰囲気があったりとかそういうので変わってくるんですよね

 

院生も一人一人くせがあったりするのでね(笑)それでくせが良い方向に働くときもあるし、逆に「うーん・・」ていうときも

 

一同: あははは

 

‐‐ そういうときは担当を変えたりするんですか?

 

いや、ちょっと合わないなっていうんですぐに担当を変えるとかではなくて、クライエントさんからしてもそうですよね、この院生さんちょっと合わないなと感じる場合ってのはあり得るわけですけども、そのときに、でもこの人こんないいところがあるんだよとか、このやり方ちょっと合わなかったとすると、じゃあどんなやり方が良いのか一緒に探しましょうよとか。クライエントさんにもこのセラピスト嫌だっていってすぐに諦めさせちゃうんじゃなくて、踏みとどまってもらいたいし。

 

‐‐ それが進歩に繋がると

 

さっきの話にちょっと似てるでしょ?

 

‐‐ 向き合うってこと

 

うん、ストレスに向き合うってこともそうだし、この状況で、たとえばうちのセンターで上手くいくかなとか、セラピストが誰の方が上手くいくかなとか、このやり方で上手くいくかなとか、当然条件いろいろあるんだけども、時には、このままではうまくいかないんじゃないかと思うことがあるわけですよね(笑)そのときに、「あーだめみたいだな」って一緒になって諦めちゃっては、やっぱりセラピーにならないので

 

‐‐ うん

 

うん。そこはなんとか希望を持ってもらえるようにこっちもあの手この手で・・(笑)あとはその、ちょっとあれって思った時に、早めに気が付いて手当てすることが必要ですよね。すごく大きくなっちゃって、「あーこの先生じゃだめだ」ってなってしまうともう話しもしてくれなくなっちゃう。それこそ来てもくれなくなっちゃうので。そうなる前に早めにキャッチしてっていうことですね。

 

‐‐ じゃあ、やっぱり技法とかが全てではなくて、カウンセラーの方が持ってる雰囲気とか話し方だったりとかがすごい影響されますよね。

 

まあそれもあるんだけども、技法って言っても表面的にこの手順をやればいいっていう技法ではないわけですよ。むしろ、例えばトラウマだとすると、どういうトラウマ刺激に遭遇してるのか、その時にクライエントさんが何を体験しているのか、体ではどう反応し、考えではどう反応しちゃっていて、どんな感情が起きていて、逃げたくなっちゃうっていうのはどんな逃げ方をしちゃうのか、逃げ方もいろいろくせがありますから。そこをしっかりと見極めていくってことをしていかないと、つまり見落としちゃうわけですよね。「あーこの逃げ方だな」っていって、Aの逃げ方だなと思っていたらば、実はもっと巧妙なBの逃げ方をしていて、そこに気が付かないと、Aで逃げないようにってことばっかりやっても、じつはそれやってる間にもBで逃げちゃってると、治療は進まない。そんなことがあって。そのBのところをちゃんと見抜けるかどうか。じゃあそれはどうやって気づくかっていうとやっぱり会話をしたりとか、ちょっとした仕草とか、ある話をした時にちょっとおびえた表情が見えたとか、そういうようなことを細かく見ていっていく中で、見極めるってことですよね。

 

‐‐ ありがとうございます。ではそろそろ次の質問をさせていただきたいんですけれども。

 

はい