2015年6月アーカイブ

地域福祉ゼミ 始動

地域福祉ゼミ 始動

 山下興一郎

 2015年度、社会福祉学科に、地域福祉を専門とするゼミが3年生、4年生クラスが誕生しました。

地域福祉は、高齢者、障がい者、子ども等対象別に発展してきた福祉政策や実践との関連で考えると、一般的には分かりにくい分野とも言われています。

しかし、私たちは地域社会で暮らしています。 地域で暮らす人は赤ちゃんから高齢者までさまざま。

地域福祉は、この街に暮らし続けたいということを念頭に、地域社会に人々と環境の関係性に関心を寄せて、これまで運営されてきている福祉施設の地域化も含め、地域住民の個別の相談援助から地域の福祉のまちづくりまで広く対象にした学問分野です。

今回は、地域福祉ゼミの紹介をします。

 

 3年生ゼミ~研究するアタマをつくる

  3年生は、17人で構成されています。地域福祉をテーマにしつつ、保育所の待機児童・建築反対問題、子どもの健全育成、社会的養護、高齢者等の孤立死、災害、地域医療、農業、小地域福祉活動、老いや死生観、等多様な関心事を調べ、発表と討論を繰り返しています。

山下興一郎ゼミの3年生

発表と討論をする3年生

 

4年生ゼミ~大学での学びの総仕上げを目指す

4年生は、15人で構成されています。

3年生でも経験したゼミでの研究活動を積み上げ、卒業年度でもあるこの一年間は、大学での学びの総仕上げの年として位置付け、ゼミ活動に力を入れています。

研究テーマは、認知症ケア、介護者の支援、地域包括ケア(特に、一人暮らし高齢者の地域生活支援)、知的障がい者の地域生活支援、災害と地域福祉、限界集落と地域支援、生涯スポーツ、児童虐待、自殺、生活困窮者支援、若者支援、小地域ネットワーク、ふれあい・いきいきサロン、精神科病院における法人経営と患者ケア等が学生の研究テーマです。

 山下興一郎ゼミの4年生

  4年生ゼミの発表風景

 

合同ゼミ(学外活動)~内外の実践を知り、人との交流を深める

  今年より、3,4年生合同のゼミ運営もはじまりました。

3年生の担当者と4年生のゼミ長、担当者から構成するゼミ運営協議会を設置し、フィールドワーク係、合宿係、交流係等、ゼミ員は何らかの役割を全員が担い、1年間の活動計画を立て学生が主体で企画運営をすすめます。

 さっそく、5月6日午後にはプレフィールドワークとして鎌倉の書展(ダウン症女流書家金澤翔子展)見学と、今年、東京都立川市社会福祉協議会に採用された本学卒業生へのインタビューを、6月5日18時~20時には、千葉県弁護士会で開催された学習会「貧困問題研究会」に参加し、弁護士、県内の福祉関係者との交流を深めました。

 正式なフィールドワークの第1回は、2015年6月5日、千葉市内の医療法人グリーンエミネンス 中村古峡記念病院、老人保健施設等を見学しました。

社会福祉学科 ヨーロッパ社会研修

社会福祉学科学生が、ヨーロッパ社会研修に行ってきました!

 山下興一郎

はじめに

 2014年度のヨーロッパ社会研修は、デンマーク、ドイツ、イタリアの3か国を2月に12日間訪問し無事に帰国しました。ここではデンマークでの福祉関連の研修内容を中心にお伝えします。

 

1.コペンハーゲンコムーネ保健福祉課及び社会サービス課

   (Københavns Kommune,  Sundheds- og omsorgsforvaltningen

デンマークの地方自治体、コペンハーゲンの保健福祉課からは、自治体と各施設、住民との関係財政のしくみ行政の抱える問題点について社会サービス課からは福祉テクノロジーの取り組みについて説明を受けました保健福祉課では65歳以上の住民の介護、ケアを含めたコムーネ住民全体の健康促進と予防のための活動、サービスを担い、高齢者福祉に関して自治体が力を入れていることとして、

認知症のケア、②施設に入所している高齢者の孤立感、③どのように施設的でない食事を提供するか(多くの高齢者施設入所者は食欲をなくし、体重減少につながるため)という取り組み課題を伺うことができました(20152119:3012:00)。

 

 写真はデンマーク コペンハーゲンコムーネ事務所でレクチャーを熱心に受ける学生たち

  

2.スロッテトSlottet 

スロッテトはデンマークの中規模ナーシングホームです。財源は自治体。

スロッテトは、デンマークで非営利住宅法が定められてから、最初にできたアパート形式のナーシングホームでもあります。昨年20周年記念を迎えたとのことです

建物が立派なことからスロッテト」=(城)と名付けられました。  111世帯。

居室はワンルームで54から75平方メートル。キッチン、バス、トイレ付き。

スロッテトは緑の豊かなデ·ガムレス ビュ(高齢者の街の意)という地区に立地しています

この地域にはこの施設以外に複数の高齢者施設、教会や児童施設などがあり、コムーネの政策としてこの地域を高齢者のみでなく街の住民に喜ばれる場所に発展させてきたということです

スロッテトは隣接の幼稚園と協力体制をとり、毎週5、6名の園児がやって来て高齢者たちと一緒に体操したり、スロッテトが幼稚園の他の活動に場所を提供したりしています

職員約110人。 3交代制。

わが国も特別養護老人ホーム等で認知症ケア、個室ユニットケア(本学に関係する「淑徳共生苑」も個室ユニットケアの特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)です。)が展開されているため、1990年、2000年代に行われた視察研修と違い、個室ケア等老人ホーム自体のしつらえが珍しいという時代ではなくなりましたが、視察においては、学生を4グループに分け、居室の高齢者宅の訪問をしながらケアコンセプトについて現場スタッフより熱く語っていただき、学生が日本から持ってきた折り紙の鶴等をお土産に入居する高齢者と交流できたことは有意義な経験でした。

デンマークでは、寝室とリビングは別という考え方から、これまで1部屋だった個室ケアは今後12部屋になる政策となったといいます。

スロッテトは旧型施設(1部屋1室)となるため、スロッテトとしての新たなケア取り組みを始めており、現在は自治体と協議し、LGBTの利用者の施設ケアについてスタッフが学習をはじめ今後のケア展開をしようとしているところであり、次回訪問ではそうした新しい実践もお伝えできるのではないかとのことで、再開を約束しあいました。(21113:3015:30

                            

                                 ナーシングホームスロッテトの前で

 

ヨーロッパ社会研修の様子

LGBTの学習資料についてもレクチャーを受ける学生たち

 

3バウネゴーンBaunegården

 障がいがある子どもの学校と宿舎の併設施設、バウネゴーンを視察しました。

行政ではコペンハーゲン コムーネの障害児センターの管轄下にあるこの学校(施設)は、6歳から18歳の子ども(幼児自閉症、アスペルガー症候群など)のための学校と入居施設である。

コペンハーゲン郊外にあり、自然に囲まれた白い館が入居施設や事務所となり、コテージのように学校が配置されています

主に、自閉症スペクトラムと診断された子どもが暮らしています。

教育においても、障害児を症状や診断からのみ捉えるのではなく、一個の人格として尊重しています

年齢別に4つのクラスがあり、授業は個々に合わせた1グループ6名までの小グループで行われます

職員数53名。 

訪問中たまたま出会えた子どもがいきいきした表情で学生に話しかけてきた場面があり、その笑顔に学生はくぎ付けになりました。(2129:3011:30

ヨーロッパ社会研修の様子 パウネゴーン 宿舎棟

 

3.ハンディキャップ オーガニゼショナーズ ハウスHandicaporganisationernes Hus

 ハンディキャップオーガニショゼショナーズハウスは、障害者と全ての人のため世界一利用しやすい建築施設と環境を目指して作られた建物です。

 その建物のコンセプトについてレクチャーを受けながら施設を視察しました。

2012121212時にマルガレーテ2世女王出席落成式が行われたといいます

この建物は、世界で初めて複数の障害者組織が同じ建物に居を構える複合オフィスビルということです

23の障害者組織が同居しており、310人が勤務。4階建て。建物面積約12,600平方メートル。

この施設のコンセプトを一言で説明すると、世界で最も利用しやすい建築物そしてがい者ケース対応への大きな機動力いうことでした

できるだけ幅広く障がい者に対応できるよう、車椅子使用者に使いやすい前後ドア開閉のエレベーターを設置、視覚障がい者用の点字表示(施設内外。最寄駅から建物までの配慮も行う)建物の壁などをブロック別に色分けすることなどによりわかりやすい建物のデザイン、建築素材の選択、災害時・非常時の避難方法の工夫など、細部に渡って念入りな配慮と工夫が凝らされ、最新の知識と技術が生かされた画期的な建築物ということでした

ただ事務機能を果たすオフィスではな、人間性に重点を置いて自然光にあふれたフレキシブルな空間を建設したということでした

共通のミーティングスペースもふんだんに設けてあり、ヨーロッパ障害者会議等、大きな催しが行われますまた、この建物自体が障害者雇用のよい例でもあると説明を受け、学生の反応も大きいものでした21213:3016:00


ヨーロッパ社会研修の様子 










ハンディキャップ オーガニゼショナーズハウス 館内掲示板

 

 おわりに

 学生たちはヨーロッパの風に吹かれて、生活、文化、芸術、そして福祉、教育、医療、リサイクルといった視察ができました。

デンマークではデンマーク大学や中央図書館といった重厚な建物も視察、ドイツではロマンチック街道、ミュンヘンでは研究旅行中であった本学教授ともセッションすることもできました。

イタリアではフィレンツェ、ミラノで存分に芸術、文化、食生活にふれ、帰国の途につきました。

  ヨーロッパ社会研修の様子

 

社会福祉学科・看護学科との合同授業

看護学科との合同授業

 伊藤千尋

 今回は、社会福祉学科と看護学科の合同授業「保健医療と福祉の連携」をご紹介します。

この日の授業では、社会福祉士や精神保健福祉士を目指す社会福祉学科の4年生と看護師や保健師を目指す看護学科の4年生(学生約250名+教員10名)が5人~10人程度の混合グループに分かれて、「高齢者夫婦世帯の退院支援」の事例について検討しました。

 

学部を越えた学生たちが、チームケアついて体験学習できるのは、さまざまな職種を目指す学生が集まる淑徳大学ならではの取り組みです。

 以下、リアクションペーパーから、学生たちの“学び”をご紹介します。

 

 ・それぞれの職種で譲れない考えがあるのだと知ることができた。多職種でクライエントの支援を協働していくためには、まず互いの考えを否定せずに聞き入れていく姿勢が求められており、互いを尊重し合うことが必要だとディスカッションから学ぶことができた。

 

・事例の情報は限られており、その人に合った支援を考えるにあたっては、多くの情報が必要であると感じた。

 

・凝り固まった視点でいると、他の職種に偏見を抱いたり、利用者に必要な支援を提供できなくなる場合があるだろう。今日の授業でお互いの視点、そこに至るまでの根拠や考え方を理解できたのは、後々になってとても大きな意味をもつのではないだろうか。

 

・違う知識を持った専門職だからこそ、協働して、チームとして働きかける意味があるのだと学んだ。

 

・医療職は治療的な視点ばかり持っているのだろうと勝手なイメージを持っていたが、支援をするにはどれもとても大切なものであり、あらためて多職種で関わる意義、専門性の重要さ、福祉職がコーディネートする役割の大切さを学ぶことができた。

 

・普段、同じ分野の仲間で学んでいると、詳しく説明しなくても共感できることが多くあるが、他職種と意見を交わすと自分の知識の乏しさを感じ、大変刺激になった。もっと勉強して、自分の言葉で伝えられるような専門職になりたい。

 

・視点の違いはあるが、「クライエントのために」という思いは共通していた。職種は異なっていても、一つのものに向かって共に考え、協働・連携することはすごく面白みがあり、やりがいのある仕事だと感じた。


まずは全体で事例のイメージづくりからスタート

 


社会福祉学科・看護学科の合同授業

 社会福祉学科と看護学科の混合グループでのディスカッション

 

全体発表(各グループからの報告)の様子


小学校での読み聞かせ活動

小学校教員を目指している2年生のカレッジアワークラスでは、今年度、小学校での読み聞かせ活動を行っています。
5月27日に2グループが近隣の公立小学校で、朗読劇をさせていただきました。
お話しを楽しみにしてくれている子どもたちを前に、熱のこもった演技ができました。

アーノルド=ローベル作「お手紙」の朗読劇の様子
アーノルド=ローベル作「お手紙」の朗読劇の様子