コミュニティ研究Ⅱ「地域活性化コース」(担当:芹澤高斉教授、八田和子准教授)

 8月28日(金)、長南町に暮らす森山佳代さんと金坂哲宏さんのお二人からお話をうかがい、長南町での生活の様子やまちの魅力等について教えていただきました。
 今回の取り組みは森山さんが管理されているギャラリー「プロジェクト長南」で行われたのですが、この施設は長南町で行政と町民の協働によるまちづくりを進める「協働交流サロン」のメンバーが、旧郵便局をリノベーションしたものです。この「プロジェクト長南」に芹澤先生が赴いて司会進行を務め、森山さんと金坂さんがZoomを通じてお話をしてくだいました。

 最初にお話されたのは、森山さんです。森山さんは、長南町にあったシュタイナースクールにお子さんを通わせたいと、東京から長南町に教育移住された方です。長南町に暮らし始めると、もう東京では暮らせないと思うほど、長南町での生活が充実したものになったそうです。仲間とともに醤油造りを始めたり、野草料理や太巻き寿司づくりの教室に参加したり、友人宅の裏山を整備する「大地の再生ワークショップ」に参加するなど、多彩な活動を楽しまれています。また、長南町の魅力を伝えるためのミニバスツアーを企画したほか、空き家になっている古民家などの物件探しを始めるなど、長南町のファンづくりと移住希望者のコーディネートにも力を注いでおられます。

 森山さんのお話で印象的だったのが、「都会は他人に命を預けている」という言葉です。都会では、何もかも他人の手によって用意されたもの、切り売りされているものを自分で集めるだけになるのですが、長南町では、仲間とともに必要なものを自分たちの手でつくり出すことができる。それがまちの魅力となっているとのことでした。

 次にお話して下さったのは、蓮根農家の金坂さんです。金坂さんは、蓮根では不可能とされていたオーガニック栽培の技術を確立し、放置竹林から作られた竹チップを使って蓮根を育てておられます。「金坂蓮魂」と名付けられたその品種は、他の蓮根にはない歯ごたえや味をもち、スーパーや飲食店、直売所で販売されるだけでなく、カナダにも輸出されています。
 金坂さんは、お父様が急逝されたことがきっかけで就農されましたが、最初はなかなかうまく行きませんでした。しかし「自分はやりたいことでないと出来ないタイプの人」であると気づき、自分のやりたいこととは何かを考えられたそうです。そこで取り組むことにしたのが、当時不可能といわれた蓮根のオーガニック栽培の研究です。山間部にある長南町の圃場は、平野部と比べて作業の効率化が難しく収穫量が少ないという不利な状況がありました。それだけに蓮根のオーガニック栽培は、他の蓮根との差別化を図り、ブランド化するための必須の技術でした。金坂さんは何年も試行錯誤を続け、ようやく今の技術を確立されたそうです。今後は会社化したりネットショップを開設したりして、需要の伸びに対応した供給体制を整備することが課題であると言われていました。

 お二人のお話に対しては、学生から様々な質問が投げかけられました。森山さんに対しては、「移住を考えている人にどんなアドバイスをしますか」「移住してみて、不便さやデメリットを感じた点はありますか」「長南町の魅力を発信して人を呼び込むために、どのような取り組みが必要だと思いますか」といった質問が、金坂さんに対しては、「竹チップを使ったオーガニック栽培にたどり着くまでどのような苦労がありましたか」「蓮根栽培は楽しいですか」という質問や「お父様が亡くなられて就農しようと思ったのはすごいなと思いました」という感想が述べられました。お二人は、学生の質問や感想に対して、率直に思うところを述べて下さいました。

 森山さんのお話で、長南町での暮らしや自然の素晴らしさだけでなく、まちづくり、コミュニティづくりの課題も学ぶことができました。また、蓮根農業でまちを盛り上げている金坂さんからは、自分の個性を踏まえたスタイルで仕事をすることの大切さ、不利な条件を乗り越えていくための思考方法を学ぶことをできました。学生のために貴重なお時間を割いて、意義深いお話をしてくださった森山さん、金坂さんに心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
 最後に一つだけご紹介いたします。実は金坂さんが掘りたての「金坂蓮魂」を会場に持ってきてくださったのですが、下の写真は芹澤先生がそれをステーキにしているところを撮影したものです。オリーブオイルで焦げ目がつくまで両面をじっくり焼いたあと、塩・黒こしょうを振って食べると、とても美味しいそうです。(文責:八田)



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